【報告】テニュアトラック制検証報告概要が公表されました。

2021年02月05日

 研究戦略室は、本学テニュアトラック制の検証を行い、学長へテニュアトラック制に関する報告と提言を提出しました。なお、報告の概要と提言は令和2年度第11回企画戦略会議に下記のとおり、報告されました。

テニュアトラック制検証報告(2016 年度 – 2019 年度)概要


1 テニュアトラック制の運営概況
 

 本学は、重点的研究分野とその関連分野の教育・研究の高度化と活性化を図るために、意欲的で能力の高い若手研究者の獲得と育成を目指し、テニュアトラック制度を実施している。
 テニュアトラック制は、2008 年 (平成20 年度)文部科学省・科学技術振興調整費に「若手グローバル研究リーダー育成プログラム」として採択されたことから開始した。実施組織として改革特区人材システム改革推進本部を設置し、10 名の研究者を採用した。
 2011 年(平成23 年度) には、JST・科学技術人材育成費補助金のテニュアトラック普及・定着事業に採択され、2015 年(平成27 年度)からは、自前テニュアトラック普及・定着事業を開始した。
 2012 年(平成24 年度)には、改革特区人材システム改革推進本部を博士キャリヤ支援も含む人材システム改革推進本部会議に改組し、2017 年(平成29 年)4 月に、人材システム改革推進本部会議を、人事の一元的管理のため全学人事管理委員会に統合し制度の見直しを行った。
 また、本学の財政事情に鑑み、5 年間で1 千万円の研究費を、5 年間で7 百万円に変更し、卓越研究員を採用した場合は、2 年間予算措置の繰下げ(3 年間で5.6 百万円)や、出産育児及び介護などのライフイベントに対応する規則の改正等を行った。
 2011 年(平成23 年度)から現在までのテニュアトラック教員の採用数は、表1 のとおり採用者合計数は28 名(男性26 名、女性2 名)である。
 なお、2019 年(平成31 年度、令和元年度)は、うち1 名について、文部科学省・(独)日本学術振興会卓越研究員事業を活用し採用した。
現在、8 名が在籍中、農学部助教1 名が2021 年4 月赴任予定である。


2 検証の総括
 

 2016 年度在籍中のテニュアトラック教員及び2015 年度以前にテニュアを獲得した教員
(以下「テニュアトラック教員」という。)18 名の4 分野(研究、外部資金、社会貢献、国際貢献)の業績と、それ以外で採用された教員の業績を、教員データベースから比較し、上位20%以内に入っているテニュアトラック教員数をまとめた結果を表2 に示す。テニュアトラック教員は、研究、外部資金と国際貢献で高い業績を上げているということができる。
 論文に注目すると、ミゼイキス・ビガンタス教員は44 編、居波 渉教員は38 編、一ノ瀬元喜教員は32 編、小野 篤史教員は29 編、臼杵 深教員は24 編の論文を発表しており、研究業績は高い。また、ミゼイキス・ビガンタス教員は697 回、大西 利幸教員は192 回、一ノ瀬 元喜教員は185 回、粟井 光一郎教員は109 回、居波 渉教員は96 回論文が引用されており、高い注目度を得ている。特に、ミゼイキス・ビガンタス教員は被引用数が上位1%以内(437 回)にランクされている論文を発表しており、これは特記できる成果である。
 また、2016 年度以降、18 名中17 名が科学研究費補助金を獲得しており、実績は極めて高い。研究代表者として獲得した科学研究費補助金は、若手研究(A)が1 名、若手研究(B)が5 名、若手研究が2 名、研究活動スタート支援が1 名、基盤研究(B)が4 名、基盤研究(C)が10 名、挑戦的研究(萌芽)が4 名、新学術領域研究(研究領域提案型)が3 名、国際共同研究加速基金が2 名おり、積極的に研究の進展が図られている。
 なお、田代 陽介教員が科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)を獲得していることや、小野 篤史教員が科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP 産学共同「本格型」)に採択されていることは特記すべき点である。
 受賞しているテニュアトラック教員も多く、2016 年以降、学会等で15 名が受賞している。特に、木谷 友哉教員、小野 篤史教員、田代 陽介教員、一ノ瀬 元喜教員は受賞件数も多く活躍が見られる。居波 渉教員は助教で採用されてから、テニュアで准教授に昇任し、現在は教授となっており、テニュアトラック制を活用してステップアップした教員がいることも特記すべきことである。


3 提言

 以上から、テニュアトラック制は、意欲的で能力の高い若手研究者の育成に有効な制度である。卓越研究員事業やマネージングプロセッサーと各部局長との意見交換を踏まえ、以下のとおり提言する。

①第4期中期目標中期計画期間以降について、本学重点研究分野の教員採用は、原則、テニュアトラック制とすべきである。

②テニュアトラック普及・定着事業の事後評価を踏まえ、若手及び年俸制教員の採用増に資するテニュアトラック制導入を、全部局において進めるべきである。

③第3期中期計画のテニュアトラック制の運営に関する評価を考慮し、テニュアトラック制の教員採用枠は、部局枠で実施するのではなく、当該システム導入当初のように大学全体で確保すべきである。

④テニュア獲得教員には、獲得後の一定期間について研究エフォートを確保するために、非常勤講師の確保支援等が望まれる。

テニュアトラック報告書

報告1, 報告2, 報告3, 報告4